菊花石物語

菊花石コレクション 杉山コレクション

杉山コレクション

杉山氏は根尾川のほとり、揖斐郡大野町で生まれ育ちました。今でもここは、蛍が飛ぶ美しい田園地帯です。幼児の頃、水遊びを日課にしていて、子供の頃には、根尾川から水路に迷い込んだ鮎や鮒を追いかけて過ごしていました。それが、かけがえのない自然感を養ったのです。

中学の頃に石ブームが始まり、鉱物採集に夢中になっていました。大野町には石灰岩の野村山があり、山には鍾乳洞があり、水晶が採れ、ウミユリやシカマイヤなどの古生代の化石があったので、学友と夢中になって探しました。山の反対側は赤石が露頭した景勝地でした。どうして出来たのかと先生に尋ねると、海底が隆起したという不思議な山でした。

昭和35年、セメント工場が出来てから山に入れなくなり、次第に足が遠のいていきました。18歳の時、名古屋に板前の修業に出て、23歳の時、大野町に帰りお店を始めると繁盛しました。

根尾川で鮎釣りをしていて偶然菊花石を見つけたのが始まりで、それからは忙しい仕事の合間をみつけて、根尾や谷汲のお店を訪ね、市を覗いて色彩豊かな菊花石や珍しい菊花石を求めて来た愛好家です。還暦を迎えて仕事に区切りを付け、市で落した最高の菊花石を愛好家に斡旋を始めました。誠実で45年も菊を観てきた目は確かです。

愛好家のために電話と住所を書き添えます。根尾谷に行く時は尋ねてみてください。
501-0521 岐阜県揖斐郡大野町黒野766-1 携帯 090-2188-8217 杉山和彦

杉山氏と野村山
コレクションルーム

薄樋・紅白菊花石

薄くなって生成した小さな母岩は、母岩に沿って小さな花が咲いています。その花が紅白に色分けされていると、花を丁寧に出されています。左側は母岩の上から一つ一つの花を削り出したので、花に芯を持っています。右側は母岩を2つに切断した、切り出した面です。巻き込む花を切断したので、花の芯が少ないのですが、花の躍動があり、母岩の中は色鮮やかです。

横12高15幅2センチ
横32高15幅3センチ
薄樋・菊花石 銘・翠映

この石は、昭和45年頃求めた赤倉山の菊花石です。花芯が幾重にもなっている不思議な花なので手元に置いています。芯をなす核が同心円状に何重にも重なり、弾けたのです。上下に重なる核が互いに押し合い、多重の芯を残しています。その花に紅い瑪瑙の覆輪が、花弁を取り巻く様に入ったので緑の母岩に花が華でいます。

平樋・菊花石

厚みのある茶の母岩に大きな花が出来ます。茶の母岩は石灰質が少ない硬い母岩です。生成時、母岩が厚いとマグマの熱が長く続きます。その中で核が上に集まり、大きな集合核を作ります。そして、圧縮限界に達すると、ねばいマグマの中で核が弾けたので、波動が力強く伸びて端正な大花をつくります石灰質を多く含む厚い母岩は、核が弾けると軟らかいマグマの中で力無く広がり、花が団子になります。石灰質を含む量とマグマの熱量が適量に合わさりあった時に出来るので、貴重です。また、見所は花の芯にも、強く弾けたところは広がり、弱く弾けたところは細い筋になっています。バラバラになった芯をぎゅっと合わせると、一つに合わさります。割れた芯が花弁と繋がり破壊美と調和美を見せています。

横32高40幅9センチ

平樋母岩

昔、初鹿谷で大きな母岩を小さく割って取り出された母岩です。ウグイス色の皮目の下で母岩が小さな斑紋に彩られているので、春の暖かさを感じます。母岩は4つの層を作り、一番上の層に花を作っています。マグマが流れ込み、冷えてくるとまたマグマが流れ込み、積み重なって最後に流れたマグマの中で花が開いたのです。母岩は母岩の厚みに対して10倍以上の幅をもって出来ているので、皮目を残して直断的に割れた母岩の断面が母岩の大きさと力を感じさせているのです。

横21高21幅13センチ

樋花菊花石・板樋母岩 銘・夏の夜

花は線香花火が弾けるようにランダムに弾けています。高温に溶かされた石灰質の中で花が出来たので、花弁は細く長く伸びた時、軟らかい石灰質の母岩が自重で押され、板樋になったのです。母岩の中は、縦の花弁も横の花弁も押されて横に広がり揺らいでいます。軟らかい板樋母岩の生成が見所ですが、瑪瑙となった艶やかな赤い彩りが目を奪います。

横30高12幅3センチ

薄樋花被・樋花菊花石 銘・菊水

皮目が母岩となって、軟らかいみどりの母岩に包まれて弾けたのでしょうか。花が水に浮かぶようになって流れています。花の花弁は薄くなり、花の芯は和芯となっています。こうした花が不思議の世界に誘います。

横28高24幅9センチ

平樋・紅白菊花石 銘・千歳

平成の最後に魅力的な菊花石が初鹿谷から産出されました。初鹿谷の菊花石は石灰質を多く含むので、小さな斑が霧のようになって母岩全体に入ります。母岩は軟らかく、弾けた花弁の波動が細く伸びて花になります。伸びた花弁に母岩が沈み、花弁を押さえたので花弁の先端が広がり、花に揺らぎを与えています。そして、母岩は瑪瑙になり、花は透紅と純白の花が交互に流れて咲いています。花も色彩も全てが思考を越えている菊花石です。

横58高39幅15センチ

板樋・菊花石 銘・天指し

昭和55年頃、初鹿谷から産出した板樋母岩です。この時、小さく割れて板樋が産出されました。その多くが板樋の特徴を残さず、丸く体裁よく仕上げられました。この花出しは母岩の側面を残して、母岩の上面の花を出したので、広がる花と押し合う花の調和の美を見せています。母岩の皮目を残したので矢印に向って流れたマグマと花の並びが合わさりあって見飽きないのです。菊花石を熟知した作者の上手な花出しです。

横15 高17幅3センチ

薄樋花被・菊花石 銘・白妙

この菊花石は薄い樋が火山灰の上に被ったのです。被ることによって薄樋が山石に合わさり、割れにくくなっています。露天掘りによって大きく取り出されました。左側は母岩の端にあたります。母岩に沿って流れた花の並びが弧を描きながら咲いています。そして、右側には長く続く花の流れがあり、花は皮目の下に並んで咲いています。それでところどころに青い皮目が残っています。

菊花石の母岩の中でチョコ系の母岩が一番質の良い母岩です。この母岩の多くは、美しい銀鱗白の花が咲いていて、母岩に良く映えています。銀鱗白は方解石です。割れた花は、方解石の結晶が花弁の伸びた方向に向かってキラキラ光っています。綺麗に磨きあげると光りが消え、かわって静謐な白花になるのです。母岩の資質が良いので、花を拡大すると花の仕組みを見せています。集合核が集まり、集合核の内側が弾け合って星芯を作っています。

横47高45幅10センチ

徳山の菊花石 銘・徳山の星

揖斐川の上流、藤橋村徳山の白谷から産出した菊花石です。この村は平成20年、日本最大の徳山ダムが出来て村は水没してしまい、菊花石の産地も水没したと伝えています。母岩全体に小花が巻き込む素晴らしい石です。台の作り方からして、50年前の石ブームの頃に取り出された一番大きな母岩なのでしょうか。50年という時は人の記憶を消し去りますが、徳山の記憶を残す貴重な石です。

横60高53幅20センチ

孔雀菊花石

平成2年頃、赤倉山から大きな孔雀菊花石が取り出されました。これが孔雀菊花石最後の産出でした。根尾谷観石園が母岩を仕入れて仕上げました。その頃に作業場を覗くと、この孔雀菊花石の母岩を仕上げていました。母岩の内部に沿って花が入っていたので、花出しは母岩の半分近くを削り取り、仕上げていたので作業場は修羅場と化していました。そうして母岩に沿って入る花を苦労して出したものを杉山氏が求めました。弾ける花と孔雀の流れと母岩の姿が見事に相まって、石に自然力がみなぎっています。

横58高65幅23センチ