菊花石には、母岩の流れに沿った花の流れ「花序」があります。薄い母岩には薄く平面的に流れる花の流れがあり、巻き込む母岩には、巻き込む花の流れがあります。母岩それぞれに花の展開があるのです。
昔は、母岩を小さく割っていたので、花序が判らずにいました。露天掘りになると大量の菊花石が産出したので、大量の仕上げをするため安易に花出しをされてきたのです。そうした菊花石は、見ていると見飽きます。それで、愛好者が、愛好作家として母岩を削り出したのです。削ると、母岩には形と皮目と花序の関連があり、この繋がりを残すことが、本当の花出しだと思うのです。花序は、花出しで決まるので花出しを併せて記しています。
根尾に行った昭和51年、梶原石店で求めた原石の一つ。何も知らず皮目を削ったら流れる花の構図が表れました。花と花との並びが、調和していることを理解させてくれた菊花石です。
硬い母岩の中に核があつまり弾けると合背花序を作りだします。この花序は、この位置のこの深さでないと出ない花の構図です。愛好作家、岩中氏が最初に根尾谷の梶原石店で求めた原石を、時間をかけて削り出した菊花石です。
皮目には、巻き込んだ層が重なっています。皮目が綺麗なので一番上の層を僅かに削っています。花は、二分咲きから五分咲きの花がこの母岩の咲きはじめの花序を見せています。
皮目の下に核が集まり出来たので、全ての花に勢いあります。皮目を丁寧に削ると、花弁の先が広く全体に表れます。削り込むと、花弁が長細くなり花の輪郭が表れてきます。昔は花序が出せず、花が乱れていると敬遠されていた合背ですが、今は花序の変化を理解して花を出すと、石の魅力があらわれます。
根尾谷から沢山取り出された母岩の中、板樋はもっとも産出量の少ない貴重な母岩です。幅広く長く流れて出来た貴重な母岩が割れています。花は平面的に出し、割れた断面を残していると、石の大きさと花の流れを感じさせるのです。
大根のように長く巻き込んで出来た母岩。花出しは、大根の皮をむくように母岩の皮を薄く削っています。それで巻き込んで下の花と重なり流れる花の構図が現れています。左側の皮目はサバになっています。サバと肌目の境目をスッキリと仕上げているので、全体が凛としています。
大きな玉菊が集まり母岩を形成しています。梶原氏が花のポイントを出し、私がまとめた母岩。花をつなぐ位置を出し肩の線を崩さないようにしてまとめたのです。肩の線は美の線になり、ここに注意を払いました。