菊花石作品集 三山
- 三山
- 裏三山 泰中コレクション
石譜
前山は石が割れた面を磨いています。花の一番多い所から割れるのです。それでたくさんの花を見せています。前山の左上からマグマが流れ込んだところに注連縄模様が出来、流れと花の境界をつくっています。
前山
- 前山 横28高13巾3cm
- 前裏
中山
中山は三山の中でもっとも秀逸です。石の形に合わせた花の広がりが美を醸し出しています。裏山の右下に花があらわれました。表を介して裏を見ると花の動きを感じます。
- 中山 横27高13巾3cm
- 中裏
花の花弁も花弁の中の縞も花の全てが少し乱れて躍動感があります。生成時、母岩が少し動いたのでしようか。
後山
狭まるところを切ったので、後山は姿良くまとまっています。今度は流れと花の境目に花斑が入り、龍の模様を描いています。後裏は母岩の端。端の樋口や皮目を残すと母岩に力が残るのです。
- 後山 横25高12巾7cm
- 中裏
母岩の形
- 母岩の上
母岩の上
玉樋母岩はこの様な形で生成されました。右からマグマが流れ込み、押し込むようにして母岩が生成したのです。そして、左上できれいに巻き込んだので、巻き込みに沿って花が入っています。
- 母岩正面
母岩正面
割れた母岩なので割れた面を生かして見立てます。割れた形をいかして母岩の下を上にして作品にします。
- 母岩の皮目
母岩の皮目
母岩の上になる皮目には褐色に輝く皮目にきれいに流れた跡がついています。菊花石の母岩には美の比例があります。きれいな皮目には色彩豊かな花が咲いています。
三山製作
- 固定
固定
平行面を出してシリコンで固定するとき、シリコンの厚みが薄くなるようにして固定します。
- 切断機
切断機
立型のフライス盤を使い、防水枠の中で切断します。切断は機械の精度で仕事が決まります。刃の芯ブレや主軸の傾きが無いようにしておきます。
- 最初の切断位置
最初の切断位置
切断は0.7ミリの薄いダイヤモンドの刃で前後から切ります。山に尖った狭まる手前の広いところから切ります。広い所は花も広がっているのです。
- 切断ポイント
切断ポイント
薄い刃の切断は刃が逃げるので、最初周囲に切り込みを入れておき、刃物との平行位置を確保します。平行位置が確保出来れば、刃物はそれに沿って真っ直ぐに切断出来ます。
- 二回目の切断
二回目の切断
花は巻き込みながら続いているのでどこを切断しても見所があります。石の真ん中から2つに切断します。
- 組み石
組み石
切り出した石は組み石として使います。一つではわからない石が組み石にすることで花が見えてきます。
- 荒磨き
荒磨き
グラインダーで面を馴らした後、砥石で荒磨きを掛けます。荒磨きで丁寧に疵を取り面を滑らかにします。仕上げを掛けた時、光が乱反射しない平滑な面にしておきます。
- 皮目と肌目
皮目と肌目
皮目と肌目が交わる所を綺麗に仕上げると、凛とした美を醸し出します。
- 見立てと銘
見立てと銘
山にすると安定するので山に見立てて、3組みの組合せから「三山」と銘を決めてから台座を造ります。
- 台作り
台作り
石の形を補った台の型紙をつくり、イメージを決めます。
- 木を選ぶ
木を選ぶ
菊花石には唐木を使います。木目の良い材を使い、3つ同じ友木を使います。
- 荒彫り
荒彫り
フライス盤で上からエンドミルで彫り込みます。フライス盤の彫り込みは底面にエンドミルの後が付いています。石にチョークを付けて合わせていきます。
- 彫り込み
彫り込み
組み石の菊花石は3組揃うように仕上げます。石の周囲が均一に沈むように彫り込みます。
- 外周の決め
外周の決め
彫り込みが仕上がると外周を決めます。鋸盤で約15度の角度をつけて切ります。
- 段と足の仕上げ
段と足の仕上げ
段は同じ巾でスッキリと仕上げます。足は底に落とし込むように小さく品よく造ります。
- 台の仕上げ
台の仕上げ
ヤスリをかけ木工ペーパーで仕上げた後、耐水ペーパーの600番、1000番と磨き後は透き漆を塗って仕上げます。2~3年後、落ち着いた台になります。
- 仕上げ磨き
仕上げ磨き
石は最後にダイヤモンドパットの500番、1000番、3000番、つやをかけて仕上げます。仕上げると水や空気を弾く酸化被膜が出来て、菊花石の持つ色彩が生まれます。
休め函と桐箱
菊花石を保護するために休め函と桐箱を造ります。
箱書き 飯森 清楽氏
三山製作記
昭和60年頃、三山の母岩が産出した赤倉山では数箇所で露天掘りがされ、多くの原石が産出していました。産出した多くの原石の中に自然美を見せる特級の母岩が少しだけ混ざっていました。
その母岩の多くは、母岩が小さく形が良く皮目の色艶が輝いていたのです。そうした母岩を採石業者が母岩を割り、花を見せて二級の母岩と混ぜて一括で専門店に卸していたのです。
三山は長さ50センチほどの巻き込み母岩を5つほどに割つた母岩の一つです。母岩が直断的に割れていたため、2つ求めて岩中氏と泰中氏とに分けたのです。岩中氏の母岩で残炎をつくり、泰中氏の母岩で三山を製作したのです。
- 銘・残炎
銘・残炎
岩中コレクション